外国株

Amazon株20分割を発表

そのニュースは前触れなく突然に

日本時間2022年3月10日、米Amazonが株式の分割と100億ドル(1.16兆円)の自社株買いを発表しました。それを受けてNASDAQの時間外取引で一時10%近く上昇。結局、翌日のAmazon株は2936.35ドル(+150.77ドル、+5.41%)で引けました。
朝起きてすぐにこのニュースを知った私は我が目を疑いました。なぜならこれまで何度も分割が噂になりながらその都度期待外れに終わってきたからです。

株数は20倍に、株価は20分の1に

株式分割の規模は20対1という大規模なもので、5月末の株主に対して6月3日に分割が実施されます。20分割というのは分割の規模としてもかなり大きなもので米国市場でも大きな話題になっています。

5月末に10株所有していた株主は6月3日には200株になるわけです。それにともなって株価も20分の1になります。仮に3,000ドルだった株価は6月3日には150ドルになるわけです。したがってAmazon株主の投資資産に増減があるわけではありません。それなのに、分割が歓迎されるのは、買いやすい株価になることで株主が増加し株価も上昇する可能性が高まるからです。「株式分割は買い」というアノマリー(経験則)は今回も生きているはずです。

アメリカはもちろん、日本や諸外国でもAmazon株に注目している投資家はたくさんいます。しかし現在の株価3,000ドル(約35万円)というのは気軽に買える金額ではありませんん。私が推奨している「貯株」にもふさわしいとはいえない株価でした。それが6月から150ドル(1.7万円)になるわけですから俄然、投資の有力候補になりそうです。

23年ぶりの分割が意味するもの

Apple、Tesla、NVIDIAといった銘柄が近年相次いで株式分割し、それをきっかけに株価が大幅上昇しました。Amazonも今後、上値を追いかけるのではないかとみています。
1999年に2分割して以来、株式分割を23年間行わなかったAmazon。それがここに来て、決算発表以外でのタイミングでの分割発表というサプライズでした。これは、経営陣が株価対策を強く意識して証でしょう。従業員の一部に自社株の支給をしているAmazonにとって株価上昇は重要課題。ところがここ1年半ほど株価は横ばいで、幹部人材の流出につながっていました。

「アマゾンが自社株を買う時に買えばもうかる」
(モルガン・スタンレー)


同時に発表された100億ドル(1兆1,600億円)の自社株買いも見逃せないニュースです。株価を押し上げたいAmazon経営陣の本気さがうかがえます。
時価総額が165兆円あるAmazonにとって1.16兆円の自社株買いは規模が小さい感じはしますが、それでも過去最大の自社株買いには大きな意味があります。これまでAmazonは、本業を優先させるため株価対策にお金をほとんど使ってこなかったからです。アマゾンが自社株買いを実施したのは2011年10~12月期と2012年1~3月期では、半年で平均42%上昇し、1年で2倍、2年で2.4倍と右肩上がりとなっているのです。

「アマゾンが自社株を買う時に買えばもうかる」(モルガン・スタンレー)というジンクスがあるのです。

ダウ採用も視野に

「バンク・オブ・アメリカ」のジャレッド・ウッダード氏は80年以降、株式分割を発表した企業の株価推移を調査しています。それによれば、分割発表から半年後の平均騰落率はプラス14%、1年後ではプラス25%でした。今年2月にはグーグルの持ち株会社アルファベットも7月に1株を20株に分割する計画を発表しています。

株式分割をするもうひとつの目的はダウ平均の構成銘柄に加わる可能性が広がることです。3月11日時点でダウ構成銘柄30のうち16銘柄が100ドル台です。株価100ドル台が「ダウ平均に採用されるためのスイートスポット(最適な場所)」と表現するアナリストもいるほどなのです。

それにしても2020年秋から株価がまったく騰がっていないAmazon。相場という点でもある意味、休養充分です。この分割発表を受けてまた力強い上昇相場が始まることを期待しています。

★日本経済新聞「Amazonが株式分割 自社株買いは最大100億ドルに」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN100J60Q2A310C2000000/