投資入門

入門!会社四季報

「会社四季報」とは

東洋経済新報社が年に4回発行している「会社四季報」は投資家必携のツールです。株式市場に上場している全銘柄(本日現在3,874社)の企業データが載った情報誌は他になく、個人投資家はもちろん、証券会社や金融機関、機関投資家のプロもつかっています。
創刊は1936年(昭和11年)ですから戦前、戦中、戦後と投資家に愛用されてきた実績と信頼ある情報誌といえます。

昭和49年、当時20歳だった私は初めて「会社四季報」を買いました。極洋や日本水産といった水産・農林の会社から順番に見ていきましたが、20歳の私には敷居がとても高くてほとんど理解出来ませんでした。ただ勤務先が製造業で、いつも工場で「日本酸素」のボンベを見慣れていたことと、四季報の業績欄の数字が良さそうに見えたので当時の最小単位1,000株(株価は200円台だった)買いました。幸い、3ヶ月で数万円の利益を出し好スタートを切ったのでした。

初めての投資は「日本酸素」(現・日本酸素ホールディングス)。
昭和49年、1974年の四季報記事。

四季報に慣れていく

日本酸素を利食いした私は、次の投資も知っている会社にしました。勤務先の工場でも使っていた工作機械のなかで製品が評判がよかった園池製作所(現・アマダ)の株を買いました。幸いこれも利益が出ました。
このように、投資をしている期間はほぼ欠かさずに会社四季報を手元に置いておくように心がけてきました。そして四季報に慣れていったわけです。

企業ドラマは小説や映画より興味深い


60年代のソニー、70年代から80年代初頭の任天堂、2000年代初頭のユニクロ、2010年からのレーザーテックやエムスリーのような会社が「若武者」のように市場に登場し、たくましく大人に成長し世界に羽ばたいていくプロセスを追いかけることもできます。

また、無敵の帝国をつくりあげたかにみえた大企業が経営環境の変化に対応を誤り、無残に解体され地上から消滅する様子を見ることもあります。逆境のどん底やギリギリのピンチを脱出し見事に復活を遂げる企業もあります。ライバルを飲み込み、下剋上が起こり、親が子を切り捨て、子が親を飲み込むこともある企業ドラマ。
人生は小説より奇なりといいますが、企業の栄枯盛衰物語も映画以上にドラマチックなのです。
「会社四季報」を継続しチェックすることであなたの投資キャリアが豊かになります。

年に四回(季刊)発売、それぞれの号に個性がある

四季報の名のとおり、年に四回発売されます。
春号(3月)、夏号(6月)、秋号(9月)、新春号(12月)の四回で、それぞれの月の中旬に発売されます。

春号は緑、夏号は青、秋号は黄、新春号は赤と決まっている。

夏号(6月発売)の特色


四季報の各号には特長があります。
日本企業は3月決算が多く、決算発表は4月から5月にかけて行われます。そのデータが6月発売の「夏号」に網羅されます。前3月期分の決算結果が載るほかに、新しい期とその翌期の予想数字も載るため、「夏号」は投資家の注目度が特に高くなります。

秋号(9月発売)の特色

第1四半期(4~6月期)の結果を基に上方/下方修正がかけられるのが9月発売の「秋号」です。会社発表の数字を載せるだけでなく、記者による調査の結果、四季報独自の予想数字が載ります。

新春号(12月発売)の特色


9月の中間決算発表のとき今期、来期の業績予想を修正するケースが増えます。その情報が12月発売の「新春号」に掲載されます。2期目(来期)の予想が新たに掲載されるため、その数字に投資家の関心が集まります。

春号(3月発売)の特色


12月決算の会社の本決算が載るのが3月号(春号)です。また、3月決算の会社の第3四半期までの集計が載るのも3月号です。

このように四季折々に注目ポイントが異なるため、毎号購入がおすすめです。

紙版とKindle版がある

紙の会社四季報もKindle版の会社四季報もともに2,300円(税込み)。また、紙の会社四季報には文字の大きさが2倍の「ワイド版」もあります。こちらは2,900円(税込み)しますが、シニアグラスが必要な方は迷わずワイド版をおすすめします。
ただし、iPadなどのタブレット端末をお持ちの方は断然Kindle版が良いでしょう。私も数年前からそうしています。ピンチ操作で文字を好みの大きさに変更できるのと、毎号のデータがiPadに貯まるため過去データを参照することが簡単にできます。しかも何冊貯め込もうとデータはそれほど必要としませんので何冊収納してもiPadの重さは1グラムも増えません。

ただ、気をつけていただきたいのは電子書籍とはいってもスキャンデータなので文字検索はできません。本というよりは写真集だと思っていただければよいでしょう。

検索ができる「会社四季報ONLINE」という選択肢もありますが、それについては別の機会に譲ります。

証券コード順に並んでいる

証券コード(銘柄コードともいう)は4桁です。会社名だけでは間違いやすいため証券コードを用いるようにしましょう。
4桁のコードの最初の2桁はその企業が属している業種を表しています。下2桁は原則として上場順に付けられています。

業種ごとの証券コードはおおむね、次のようになっています。

1300番台:水産・農林業
1500番台:鉱業
1600番台:(石油/ガス開発)
1700番台~1900番台:建設
2000番台:食品
3000番台:繊維・紙
4000番台:化学・薬品
5000番台:資源・素材
6000番台:機会・電機
7000番台:自動車・輸送機
8000番台:金融・商業・不動産
9000番台:運輸・電信・電気・ガス・サービス

「○○業界には投資しない」、「○○業界と◎◎業界だけに投資する」と決めることも悪くありません。
経験、知識、情報が乏しくいわゆる情弱投資では勝ち目がありません。その業界や企業のことを知っていればいるほど勝率は高くなるのです。
したがって四季報をチェックする場合には本を読むように最初から順に見る必要はなく、あなたが読みたいところだけを拾い読みすることもできるのです。

「え、どうしてこの会社がこのコード?」

最近では、上場する企業が増えたことからコードが不足しはじめています。そこで業種に関係なく空いているコードに振り分けられるケースが増えています。そこで東証では、将来的に4桁の数字とローマ字を組み合わせたコードに変更する可能性もあることをシステム会社などに周知しはじめており、証券コード改革が迫っているように思います。

上場したあとになって事業内容が変わっていくことも多く、銘柄コードと企業の事業内容が一致しないケースもあります。また、上場企業が倒産したり、買収されたり、何らかの理由で上場廃止になった場合には、そのときの企業コードは永久欠番になります。
会社四季報をみていて、番号が飛んでいることがあるのは本当に未使用で飛んでいる場合と、欠番によるものとがあるのです。

業種を代表するゼロイチ銘柄

証券コードの下2桁が「01」の企業のことを「ゼロイチ銘柄」と呼んでいます。日本を代表する企業として割り当てられた誇り高き「ゼロイチ」をみてみましょう。

極洋(1301)水産のゼロイチ
大成建設(1801)建設のゼロイチ
森永製菓(2201)食品のゼロイチ
東洋紡(3101)紡績のゼロイチ
富士フィルムホールディングス(4901)化学・薬品のゼロイチ
日本製鉄(5401)鉄鋼のゼロイチ
ツガミ(6101)工作機械のゼロイチ
日立製作所(6501)重電のゼロイチ
日産自動車(7201)自動車のゼロイチ
伊藤忠商事(8001)商社のゼロイチ
日本銀行(8301)銀行のゼロイチ
大和証券グループ(8601)証券のゼロイチ
三井不動産(8801)不動産のゼロイチ
東武鉄道(9001)電鉄のゼロイチ
日本郵船(9101)海運のゼロイチ
日本航空(9201)空運のゼロイチ
三菱倉庫(9301)倉庫のゼロイチ
TBSホールディングス(9401)放送のゼロイチ
東京電力ホールディングス(9501)電力のゼロイチ
松竹(9601)娯楽のゼロイチ

会社四季報に証券コードが初めて載ったのが1968年4集(新春号)でした。いまでは業界トップ企業が入れ替わっている業種もありますが、当時の代表企業を思い起こし少しセンチメンタルな気分にもなれるのが証券コードですね。

会社四季報の使い方

「会社四季報」の冒頭にこのような解説が載っています。12のブロックで読み解くことができるのですが、私は③と④と⑨を重点的にチェックします。
まず③の見出しタイトルで瞬時に近況をつかみ、必要があれば③の記事を読みます。次に④の欄に目を移して、売上は伸びているか、利益はしっかり出ているかをチェックします。
前期に比べて今期はどうか、今期に比べて来期はどうかをみます。
次に⑨の財務欄の自己資本比率が高いか、キャッシュフローは好調か、などをみます。

もっと詳しく見方や使い方を勉強したい方は、四季報の巻頭に次のような解説記事がのっていますのでご確認ください。

また、市販の四季報解説本も勉強になります。私が読んで参考にしたのはこちらの本です。「会社四季報」だけで財を成した投資家がいるくらいですから、こうした公式ガイドブックにお金と時間を割く価値はありそうです。

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巻頭特集も投資のヒントに

毎号の四季報では巻頭に様々なデータを紹介しています。それをランキング形式などで見せてくれるので知らなかった好調企業をここで発見することもできます。時間を見つけてじっくりとチェックしてみてください。

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