今日は趣向を変えて、投資にまつわる実話ベースの物語をご紹介します。米国を代表する人気銘柄「アマゾン」のようにコンスタントに上昇してきた銘柄でも投資のタイミング次第では大きな損をすることがあるのです。
ある町にトム、ジョン、ビリーの三兄弟がいました
彼らの父は資産家で2007年秋に亡くなった時、多額の遺産を残しました。その結果、三兄弟はそれぞれ100万ドル(約1億円)ずつ相続することになりました。彼らはそれぞれ別の会社に務めていましたが、三人とも株式投資に興味をもっていました。
父の葬儀が終わり、三兄弟は遺産の使いみちについて話し合うことにしました。

三人とも自分の家を持っていましたし借金もなかったので全額投資に回すことで奥さんの了解も取りつけました。ただ、どこに投資すべきか決めかねていたのです。
長男のトムが言いました。「アマゾンはどうだい?」

「賛成、僕たちもアマゾンに投資する」と二人の弟も大賛成。
その日のアマゾン株は70ドルでした。
二ヶ月後の2007年12月、遺産が払い込まれた。長男と次男はさっそくアマゾン株を買うことにしました。人気が出ていてアマゾン株は急騰し90ドルになっていましたが、構わずに買ったのです。
慎重だった三男は一番安く買えた
だが三男は腰が重く、買いませんでした。
「どうしたんだいビリー?買わないの?」と長男。
ビリーは煮えきれない表情で、「アマゾンが良いとは思うけれど、最近値上がりし過ぎちゃってさ、PER(パーが)がかなり割高になってるんだよね。もう少し下がるまで待ちたいんだ」と言いました。
「相変わらずお前は慎重だな」と笑う長男。
結局三男のビリーは、5回に分けて1〜2カ月おきにアマゾン株を買いました。アマゾン株は90ドルをピークに値下がりし、11カ月後の2008年11月には35ドルになっていました。
平均価格50ドルで100万ドル分のアマゾン株を買うことができたビリーは、二人の兄よりもかなり安く買えたことになります。

その間、兄二人は大変なことになっていました。90ドルで買った株が35ドルに値下がりしたため、資産が61%以上も減っていたのです。正直、これはこたえました。
長男はアマゾンの未来を信じていたので、あわてることなく保有することができていたのですが、次男のジョンの場合はそうではなかったのです。
夫婦の意見が分かれた次男は悲惨なことに
アマゾンのことをそれほど信頼していなかったジョンは焦っていました。それに輪をかけたのが彼の奥さんです。61%も値下がりしたことにヒステリックになっていました。
「ダメだこんな株。もうこれ以上、お金を失いたくない」と次男夫婦はアマゾン株をすべて売却することにしました。結局、61万ドルもの資産を失い、手元に残ったのは39万ドル(約3,900万円)。
一年弱で資産の大半をなくしたことに我慢ならなかった妻の怒りは収まらず、夫を口汚くののしり、30万ドル(約3,000万円)の現金をもって家を出ていきました。二人はそのまま離婚したのです。

ショックを受けたジョンは会社勤めをやめ、家にこもってアルコール依存症になりました。やがて兄弟にすすめられて依存症を克服する施設で暮らすようになりました。
一番賢明だったのは・・・
1年後、三男ビリーの財産は300万ドル(3億円)に膨れ上がっていました。それをすべて処分したビリーは、近所で最も裕福な独身者として優雅な生活を送った。
当時の彼はまだ38歳、この先50年生きるとしても3億円あれば毎年600万円ずつ出金することができます。事実、ビリーはそのようにしたのでした。
あれから13年過ぎました。
2020年暮れの長男トムの資産はどうなっていたでしょうか。
90ドルで買ったアマゾン株はその後30ドルまで下がりましたが、今は3,000ドルです。
トムが買った1億円のアマゾン株は33億円以上にふくれ上がったのです。
トムは今もアマゾン株だけを保有していますが、毎年暮れになると評価額の3%だけを売却し、翌年の生活費にあてています。2021年に売却した3%の株は1億円以上の金額になりました。これだけのお金を一年で使いきるのは大変で毎年残るため、来年からは1%だけ売却することにした。それでも年間で3,000万円使うことができ、しかも保有しているアマゾン株の評価額はこれからも増えていきそうなのです。
